わたしの宝もの

いまから約 50 年前の 1969 年末、イタリアパルマにて出版活動を⾏うフランコ・マリーア・リッチの⼿により、イタロ・カルヴィーノ『タロッキ』が出版されました。

千部限定の、とても貴重なものです(⿊い函⼊りで 35×23・5 ㎝の⼤型本のなかには、原⾊版 62枚のタロット・カードが挟まれています)。

そして、千部のうちの⼀冊が、ご縁があってわたしの元にやって来てくれました。さらに、78 枚のタロット・カード⾃体も。
ご依頼の⽅たちの過去、現在、未来を読み解いていく「タロット・リーディング」のカードとして、わたしが「ヴィスコンティ版」を使うことのとても⼤きな理由がここにあります。

そして、同じく「ヴィスコンティ・スフォルツァ版」タロット・カードを使って物語をつむいだイタロ・カルヴィーノの「宿命の交わる城」オリジナルの豪華本との出会いも、⾒えない世界からの⼤きな導きのように感じます。

作家であるイタロ・カルヴィーノの、カードを読み進めていくたのしさにふれながら、⼀⽅で、カードにご依頼の⽅たちの未来をたずねるという、お⼿伝いができればとおもいました。

『宿命の交わる城』(河出⽂庫 2004 年刊⾏)の巻末に鏡リュウジ⽒による「⽂庫版解説」があります。鏡⽒が仕事の取材でフランスを訪れたとき、パリの古書店で偶然にもフランコ・マリア・リッチ編によるイタロ・カルヴィーノ『タロウ』を⾒つけ、「こんな幸運があるのかと⾝震いした」と書かれています。「残念ながら、それは、1969 年のオリジナルのイタリア語版ではなく、1974 年に三千部限定で刷られたフランス語版であるが(略)ぼくのささやかなタロットのコレクションのなかでも、これは⾃慢の⼀品なのである」と。

すべての出会いは、偶然ではなく必然であることを考えるとき、ご縁があってやって来てくれた、『タロッキ』(イタリア語版)との出会いは、⼤きなギフトであり幸運であるとおもえます。